相続人の調査| 集める戸籍の種類や取得方法、その他相続手続で調査が必要な事項
遺産分割などの相続手続を進めていくためには相続人の調査を行う必要があります。あらかじめ誰が相続人であるのか把握しておかないと、せっかく進めた手続が無駄になってしまうおそれがあるからです。
そこで相続人調査の方法について知っておくことが大事です。当記事で調査に必要なものや相続手続に関連する他の調査内容についても紹介していきます。
相続人の調査は戸籍集めが基本
「相続人は誰か」という情報を確定させるには、戸籍集めの作業に取り掛からないといけません。少なくとも亡くなられた「被相続人」について一生分の戸籍を収集しておく必要があります。
集める戸籍の種類
そもそも「戸籍」とは、国民の出生から死亡までの身分事項を記録したもののことです。出生、結婚や離婚、親子関係、そして死亡したという事実に至るまでを管理し、これらの情報を証明するためにも使われます。
相続手続において知りたいのは「相続人は誰か」という情報であり、その相続人の決まり方は法律で定められています。配偶者や子ども、親などの身分に応じて定まるため、その身分を証明するための戸籍が役立つのです。
戸籍にはいくつか種類があり、市区町村にて「現在戸籍」や「除籍簿」が保管されています。さらにこれらに記載された事項を写した謄本や抄本があり、次のように区分されます。
現在戸籍 | 現在、在籍中の人物がいる戸籍。 |
---|---|
戸籍謄本 | 現在戸籍の全員についての記載事項を写した書面。 電子化されたものは「全部事項証明書」と呼ばれる。 |
戸籍抄本 | 現在戸籍のうち特定の人物を抜粋して写した書面。 電子化されたものは「個人事項証明書」と呼ばれる。 |
除籍簿 | 戸籍の構成員全員が結婚や死亡などによりいなくなった戸籍。 |
除籍謄本 | 除籍簿の全部を写した書面。 電子化されたものは「除かれた戸籍の全部事項証明書」と呼ばれる。 |
除籍抄本 | 除籍簿の一部を抜粋して写した書面。 電子化されたものは「除かれた戸籍の個人事項証明書」と呼ばれる。 |
改製原戸籍 | 法改正により戸籍の編製方法に変更があったときの、変更前の戸籍。 |
多くの場合、戸籍謄本または除籍謄本、そして改正原戸籍を集めていくことになります。
亡くなられた方の家族など、被相続人と同じ戸籍に入っていた方がまだ残っているなら現在戸籍の写しである戸籍謄本。死亡によりすべての人物が除籍となったときには除籍簿の写しである除籍謄本を取得します。
※本当の意味の「除籍謄本」ではなく、除籍の記載がなされた戸籍を指して「除籍謄本」という言葉が使われることもあるため要注意。
戸籍の集め方
被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍を集めなくてはなりません。戸籍の集め方を以下にまとめます。
戸籍の取得の請求先 | 本籍地のある市区町村役場 |
戸籍の請求ができる人 | 戸籍に記録されている人物、またはその配偶者、直系尊属(親や祖父母などのこと)、直系卑属(子どもや孫などのこと)。 |
請求する権限を持つ人物から委任を受けた代理人。 | |
司法書士や弁護士、税理士などの専門家であって、受任した仕事を遂行するために必要がある者。 | |
必要書類 | 交付請求書 |
本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など) | |
委任状(代理人による請求の場合) | |
手数料 ※地域により差がある | 戸籍謄本:1通450円 |
除籍謄本、改製原戸籍:1通750円 |
窓口で直接取得するほか、郵送での取得、地域によってはコンビニで手続ができることもあります。
相続人の範囲とは
一連の戸籍が集まれば、その情報を読み取って相続人を確定させていきます。
そこで戸籍集めの作業だけでなく、相続人に関する法律上のルールについても知っておかないといけません。正確に調査するには司法書士などの専門家を利用することが望ましいですが、基本的なルールについては知っておくと良いでしょう。
相続人の範囲は、被相続人から見た次の人物にまで広がっています。
- 配偶者
- 子どもや孫、ひ孫など
- 父や母、祖父、祖母など
- 兄弟姉妹や甥、姪
ただしこれらの人物すべてが同時に相続人になるわけではありません。配偶者は誰とでも同時に相続人になることができますが、その他の人物については順位が法定されていますので、その順位に応じて優先的に相続人になることができます。
そしてその順番は、「第1順位:子ども」「第2順位:親」「第3順位:兄弟姉妹」と決まっています。子どもが先に亡くなっていたときはその孫、さらにひ孫が第1順位の相続人になれます(代襲相続)。
もし、代襲相続や第2順位以降の人物が相続人になるときは、さらに集めるべき戸籍の数が多くなります。なぜなら、優先的に相続人になるべき人物が亡くなっていることの証明として、戸籍が必要になるからです。
法定相続情報証明制度も利用する
戸籍集めが必要なのは相続人を調査する場面だけではありません。身分関係の証明に戸籍が使われますので、各種相続手続における「相続人であることの証明書」として戸籍謄本等が必要になります。
しかし必要になるたびいくつもの戸籍謄本等を取得するのは大きな手間です。時間も費用も発生します。
そこで2017年からは「法定相続情報証明制度」の運用が始まり、戸籍集めにかかる負担を軽減できるようになっています。
同制度を利用する場合でもいったんは戸籍を一式集めなくてはなりません。相続人を確定させるのに必要な戸籍を集め、その上で相続関係をまとめた図「法定相続情報一覧図」を提出します。
提出後は登記官が内容をチェックし、問題がなければ一覧図に認証文が付された写しが取得できるようになります(無料)。法務局に原本が5年間保管されますので、その期間中であれば、法定相続情報一覧図の交付をしてもらい、戸籍集めの手間をなくすことができます。
相続人以外に必要な調査事項
相続開始後、相続人のほかにも「遺言書の有無と内容」「遺産の内容と価額」について調査を行う必要があります。これら調査事項についてそれぞれ簡単に解説していきます。
遺言書の有無と内容
遺言とは死後に効力を生じさせる目的で残しておく意思表示のことで、これを書面化したものが「遺言書」です。
遺言書が作成されているときは遺産分割が制限されたり遺産分割協議の当事者が増えたりもしますので、相続人の調査と併せて進めておく必要があります。
遺言書にはいくつか種類があり、それぞれ作成方法と保管方法が異なります。例えば遺言者1人でいつでも作成できる「自筆証書遺言」は、自宅で保管されている可能性があります。金庫やタンスの中、銀行の貸金庫、友人、司法書士などの専門家に預けていることもあります。これらの可能性を考慮して幅広く探していかなくてはなりません。
なお、2020年からは法務局での保管も認められるようになりましたので、その可能性も考慮して調査を進めましょう。
公証役場で作成する「公正証書遺言」については、原本が公証役場で保管されています。どこの公証役場で保管されているものであっても、最寄りの公証役場から調べることが可能です。
遺産の内容と価額
遺産は遺産分割の対象となりますので、把握できていないと協議を進められません。また、各財産について価額の評価も進めておきましょう。取得する財産の価値を平等に分割したいのであれば「〇〇円」と具体的な金額の情報が必要です。相続税の計算をするためにも遺産の評価は欠かせません。
調べていく財産の種類は多岐にわたります。
《 調査すべき遺産の例 》
- 現金
- 預貯金
- 不動産
- 株式
- 投資信託
- 自動車
- 貴金属や書画骨董
- 生命保険金
- 死亡退職金
- 借入金
- 未払金 など
財産の種類別に必要な作業内容も異なります。慣れない方が対応すると大変な仕事となるでしょう。専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。
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- 所属団体
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- 経歴
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平成10年 早稲田大学 法学部卒業
平成12年 司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務
平成14年 司法書士登録
平成16年 簡裁代理関係業務認定
平成22年 いつき司法書士事務所開業
事務所概要
事務所名 | いつき司法書士事務所 |
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所在地 | 〒180-0003 東京都武蔵野市吉祥寺南町1-30-1 パークヴィラ吉祥寺502 |
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