遺贈手続きの流れと遺言内容の検討をするときのポイントについて
「相続人にはならないけど、財産を渡したい相手がいる」「子どもに相続して欲しい特定の財産がある」といった場合に利用できる手段として遺贈があります。
当記事ではこの遺贈をするための手続きやその流れを解説していますので、やり方や大事なポイントを押さえておきたいという方はぜひ参考にしていただければと思います。
遺贈が実行されるまでの流れ
「遺贈」とは遺言書を使って財産を与える行為をいい、遺贈をすることで相続人以外にも遺産を取得してもらうことが可能となります。
そこで遺贈を実行するには遺言書の作成が欠かせません。遺言書の種類を決めて、民法という法律に従い、決められた方法で遺言書を作らなければいけません。
遺言書に記載する遺言の内容についてもよく考える必要があります。望む結果を得るためにはどのような遺言を記載する必要があるのか、遺言執行者を指定するべきか、他の相続人への配慮はできているか、など考慮すべき事柄がたくさんあります。
その後ご自身が亡くなって相続が開始されるとその効力が生じます。遺言書の記載内容に従って財産を譲渡し、名義変更等の手続を進めていくのです。
遺贈をするために知っておきたいポイント
以下では遺贈をする上であらかじめ知っておきたい重要なポイントを説明していきます。最初に整理しておくと次のようにまとめられます。
- 遺言書の作成方法
- 遺言書の保管方法
- 遺贈の種類
- 遺言執行者
- 法定相続分と遺留分
遺言書の作成方法
遺言書には①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言、その他死亡の危機に瀕したときに作成できる遺言書、隔離された状況下で作成できる遺言書などがあります。
それぞれ作成方法については民法でルールが定められており、所定の方式に従って作成ができていなければ遺言書が無効になってしまいます。
例えば、よく利用される①と②の遺言書は次の要件を満たさなくてはなりません。
遺言書の作成方法 | |
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自筆証書遺言 | ・全文の自書(遺言者本人による手書き)が必須。ただし家族などが手を支える程度に補助をすることは認められる。 ・別添する財産目録に関しては自書でなくてもいい。 ・いつ作成したのかが分かるように日付を記載する。 ・遺言者の氏名を記載する。 ・押印をする。実印以外でもかまわない。 |
公正証書遺言 | ・公証役場での手続が必要。 ・遺言者は公証人に遺言内容を口述する。これを受けて公証人が遺言書を書き記していく。 ・証人2人以上を立ち会わせなければならない。 ・公証人は作成した遺言書の内容を遺言者・証人に読み聞かせる(または閲覧させる)。 ・遺言者と証人が承認し、署名押印。さらに公証人による付記、署名押印も行う。 |
遺言書の保管方法
法律に則って遺言書を正しく作成することは遺贈の大前提ですが、遺言内容を確実に相続人らに見てもらうには、相続開始まで確実に保管をしていなければなりません。
自筆証書遺言の場合は保管方法についての決まりはなく、自宅でも、銀行の金庫でも、専門家に預けるのでもかまいません。保管場所を考えるときは紛失・滅失のリスクが低いところ、改ざんをされてしまうリスクの低いところを探すようにしましょう。
法務局の保管サービスもあるため、不安のある方はぜひそのサービスを利用しましょう。多少のコストはかかりますが、安全に遺言書を管理してもらえます。
公正証書遺言の場合は保管方法を考える必要はありません。作成手続を行った公証役場で原本が保管されるためです。
遺贈の種類
遺言書は遺贈をするためのツールです。
肝心なのはそこへ書き記す内容であり、その記載の仕方によって相続人に作用する効力は変わってきます。
例えば、「土地Xは孫Aに渡す」と記載するパターンと、「財産の1/2は孫Aに渡す」と記載するパターンとでは、仮に土地が遺産総額の半分を占めているとしても、結果が大きく異なることがあります。
前者のパターンは「特定遺贈」と呼ばれ、遺贈を受ける受遺者は指定された特定の財産のみを譲り受けることになります。
後者のパターンは遺贈する財産を具体的に指定しておらず、割合を記載しています。こちらは「包括遺贈」と呼ばれ、プラスの財産のみならずマイナスの価値を持つ財産も受遺者が譲り受けることとなります。
つまり、相続人ではない人物であっても、包括遺贈を受けるとその割合で相続人同様の立場を持つことになるのです。
他にも、条件を付けて遺贈をするパターン(停止条件付遺贈:「〇〇をすれば、〇〇を渡す」など)、一定の負担を受遺者に課して遺贈をするパターン(負担付遺贈:「〇〇を渡すが、〇〇の返済をしないといけない」など)などもあります。
どうやって遺贈を行うのか、司法書士などの専門家にも相談しながら遺言内容を検討していきましょう。
遺言執行者
遺贈を実行する時点で遺言者は亡くなっていますので、財産を譲り渡す手続に参加することができません。そのため相続人や受遺者らに財産の移転手続の負担がかかってしまいます。
手渡しで簡単に済む財産もあれば、不動産のように登記が必要になる財産もあります。また、戸籍謄本や印鑑登録証明書などの書類を集める作業なども発生します。
こうした遺贈を実行するための手続を職務とする「遺言執行者」も遺言書で指定することができます。遺贈を行う際は、「遺言執行者を定めるべきかどうか」についても検討してみましょう。
財産の取り扱いを安心して任せられる人物が親族にいるのならその方を指定することも有効ですが、司法書士や税理士、弁護士などの専門家を頼ることもできます。遺言執行者には法的な知識・スキルも求められますし、利害関係を持たない第三者である方が手続もスムーズに進めやすいため、外部の専門家に依頼することも前向きに検討することをおすすめします。
法定相続分と遺留分
遺贈は遺言者の好きなように行うことが可能です。1人の人物に全財産を渡すことも、相続人ら一人ひとりに特定の財産を受け取ってもらうこともできます。
ただし極端に利益が偏った遺贈をしてしまうと、残された家族・親族、第三者との間でトラブルが発生するリスクが高いです。
そのため遺贈する財産の大きさには十分留意しましょう。「法定相続分」や「遺留分」がこの場面における判断材料となります。
- 法定相続分とは
法律で定められた相続人それぞれの取り分。遺贈や遺産分割協議がなければこの割合で相続人らは遺産を取得することになる。 - 遺留分とは
法律で定められた最低限の取り分。配偶者や子どもなど限られた人物は、遺産の一定割合に相当する金銭を確保するため、受遺者等に支払いを求めることができる。
配偶者や子どもなどが一切の財産を受け取れない、あるいはごくわずかの財産しか受け取れないという場合、遺留分についての請求が行われることがあります。受遺者にも金銭の負担を負わせることになるかもしれませんし、支払いをめぐって揉めることもあるため要注意です。
遺贈については司法書士に相談
遺贈には法律問題が絡みますので、相続に強い司法書士を頼ることをおすすめします。
遺言書の作成方法、適切な保管方法、遺贈のやり方、法定相続分や遺留分のことなどを司法書士に相談することができ、安心して相続対策を取れるようになります。
特に不動産を遺贈するときは登記申請がその後必要になるため、登記手続の代行ができる司法書士の存在がより重要になってきます。どの司法書士でも登記の相談はできますが、遺贈は相続問題の1つですので相続に関しての実績が豊富な司法書士を探すと良いでしょう。
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平成16年 簡裁代理関係業務認定
平成22年 いつき司法書士事務所開業
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