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遺留分とは?留保できる相続財産の割合や権利者の範囲、請求方法について

相続人となる方が知っておきたい制度として「遺留分」というものがあります。遺言書の作成により被相続人は自らの財産を好きに他人に与えることができるのですが、この場合でも特定の相続人には遺留分として財産が留保されています。

 

遺留分とは何か、どれだけの財産が留保されるのか、基本的なルールから請求の方法までここで解説していきます。

遺留分とは

遺留分とは、「遺贈などがあった場合でも遺留分権利者に留保される相続財産の一部分」のことです。

 

相続財産も元は被相続人個人の財産であり、好きな人物に譲渡することが可能なはずです。しかしながら、配偶者や子どもなどは被相続人の財産形成に寄与していることもありますし、その財産を頼りに生活していることもあります。また、被相続人に扶養される立場であるケースも考えられます。

 

このような事情を鑑みて、残された家族等の生活保障を図るべく、遺留分制度が設けられています。

例えば全財産を友人に遺贈する旨の遺言書があっても、遺留分権利者は遺留分の範囲で請求を行い、相続財産の一部を確保することができるのです。

遺留分権利者の範囲

法定相続人になれるのは原則として配偶者と子どもです。子どもがいないときは次点で直系尊属(被相続人の父母や祖父母)が相続人となり、さらに直系尊属もいないときは兄弟姉妹が相続人になります。

 

ただ、被相続人の兄弟姉妹にまで遺留分は認められていません。被相続人の相続財産を期待して生活する立場にはないと考えられているからです。

 

その一方、子どもの権利を引き継ぐ代襲相続人であれば、孫にも遺留分は認められます。

遺留分の侵害と金銭の請求

遺留分が問題となるのは、遺留分を侵害するほどの遺贈等が行われている場合です。そのため相続財産の多くが遺贈されていても、遺留分に相当する価額を相続できているのであれば遺留分の侵害があったとはいえません。

 

また、遺留分の侵害があるときでも、相続財産をそのままの形で取り返すことはできません。金銭債権を行使する形で遺留分を確保することとなりますので、例えば唯一の相続財産である不動産が遺贈されているときでも、遺留分相当の金銭の支払いを求めることとなります。

 

遺留分に関する規定を置く民法でも次のように定めています。

 

(遺留分侵害額の請求)

第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者・・・又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

引用:e-Gov法令検索 民法第1046条第1項

 

条文でも「相続財産の返還」などと記載はされていません。遺留分侵害額相当の「金銭の支払」が請求できるとあります。

 

なお、金銭債権となることは遺留分権利者にとってもメリットが大きいです。

相続財産を他人と共有する必要がなくなりますし、遺留分を迅速に回収することができるようになります。

遺留分の割合とは

遺留分としていくらの財産が留保されるのでしょうか。具体的な金額が指定されているわけではなく、割合で指定されています。

 

民法の規定に沿って、遺留分の割合を調べる方法を説明していきます。

総体的遺留分割合:遺留分全体の割合

遺留分権利者の個人的な遺留分を把握するためには、まず、遺留分全体の割合を調べる必要があります。

この割合は「総体的遺留分割合」と呼び、次の条文に従って定まります。

 

(遺留分の帰属及びその割合)

第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一

引用:e-Gov法令検索 民法第1042条第1

 

子どもや配偶者が相続人になる場合は相続財産の「1/2」が遺留分として留保されます。

子どものみが相続人となるときや、配偶者だけが相続人になるときも同様です。
しかしながら、直系尊属のみが相続人になるときは留保される割合が「1/3」と小さくなります。

 

相続人のパターン別総体的遺留分割合

子どもだけ

1/2

配偶者だけ

配偶者と子ども

配偶者と父母

父母だけ

1/3

個別的遺留分割合:個人的な遺留分の割合

総体的遺留分割合がわかれば、そこに法定相続分を掛け算して個人的な遺留分の割合が調べられます。

総体的遺留分割合と区別するため、「個別的遺留分割合」とも呼ばれます。

 

例えば配偶者と子どもが相続人になる場合、それぞれの法定相続分は1/2となります。そこで個別的遺留分割合はそれぞれ1/4ずつになります。

ただし子どもが2人相続人になるときはさらにこれを分割して、子ども1人あたりは1/8になります。

 

配偶者と直系尊属の組み合わせだと法定相続分は配偶者に2/3・直系尊属に1/3となり、この割合に総体的遺留分割合を乗じて個別の遺留分割合が計算されます。

遺留分侵害額請求の手順

遺贈などにより遺留分の侵害が疑われるときは、以下の手順に沿って請求ができるかどうか、いくら請求できるのかを調べていきましょう。

基礎財産の計算

遺留分算定の基礎となる財産(基礎財産)をまずは把握しなければいけません。

ここまで遺留分を「相続財産の一部」などと説明してきましたが、厳密には相続財産とイコールになるとは限りません。

 

例えば、相続人が相続開始前10年以内に受けた特別受益や、相続人以外が相続開始前1年以内に受けた贈与なども基礎財産に含めないといけません。

被相続人と受贈者が互いに遺留分を侵害する目的で行った贈与に関しては贈与がなされた時期に関わらず含められます。
その上、借金などの消極財産は差し引いて基礎財産の大きさを把握していきます。

 

例えば遺産の積極財産が3,000万円、消極財産が200万円であるのなら、基礎財産は2,800万円となります。

各自の遺留分を計算

基礎財産がわかれば、総体的遺留分割合と法定相続分から個別的遺留分割合を調べ、各自に認められる遺留分を計算していきましょう。

 

上と同じ例において被相続人の妻と長男・次男が相続人になるときは、次の計算式により求まります。

 

妻の遺留分 = 基礎財産×個別的遺留分割合

      = 基礎財産×(総体的遺留分割合×法定相続分)

      = 2,800万円×(1/2×1/2

      = 700万円

 

長男・次男それぞれの遺留分 = 2,800万円×(1/2×1/4

              = 350万円

遺留分侵害額を計算

仮に遺贈された財産の価額が1,400万円であり、配偶者が700万円、長男・次男それぞれ350万円を取得できていたのであれば、遺留分の侵害はありません。遺留分侵害額請求もできません。

 

一方、遺贈された財産の価額が2,000万円であり、配偶者が相続できたのが400万円、長男・次男が相続できたのが200万円であったのなら、遺留分の侵害があったということができそうです。

 

ただし、相続人が過去に贈与を受けていたときは慎重に考えなくてはなりません。

例えば長男が被相続人から過去に150万円の贈与を受けていた場合、遺留分侵害額の計算上は次の計算式のように贈与額も含める必要があります。

 

長男の遺留分侵害額 = 個別的遺留分-遺留分権利者が相続した価額-受けた遺贈や特別受益の価額

          = 350万円-200万円-150万円

          = 0万円

※承継した債務があるときはその分を加算して計算する

 

過去に贈与を受けていないなど、遺留分侵害額が発生するときはその分を請求することが可能です。

時効消滅の前に請求

遺留分侵害額請求権は、以下のすべての要件を満たしたときから1年以内に行使する必要があります。

 

  1. 相続の開始を知った
  2. 基礎財産を構成する財産から贈与や遺贈がなされたことを知った
  3. 遺留分が侵害されていることを知った

 

この要件を満たし、遺留分侵害額請求ができる状況にあるにも関わらずその権利行使を放置していると、1年で時効消滅してしまいます。

 

なお、上記要件を満たしていなくても相続開始から10年が経過すると請求権は時効消滅してしまいます。

この10年という期間は「除斥期間と呼ばれ、権利を行使し得る方の個人的な事情などとは関係なく期間が進行してしまいます。

 

そこで遺留分侵害額請求をするときは、迅速に対応すること、そして消滅時効のリスクを下げるために書面等で意思表示を行うことに留意しましょう。請求に応じてくれないときは裁判所を利用し、調停や訴訟を申し立てることになるでしょう。

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    平成10年  早稲田大学 法学部卒業

    平成12年  司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務

    平成14年  司法書士登録

    平成16年  簡裁代理関係業務認定

    平成22年  いつき司法書士事務所開業

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