認知症の相続人がいる場合の相続手続きと成年後見制度
相続人のひとりが認知症を患っているときは、通常の相続手続きとは異なる対応が必要になる可能性があります。遺産分割協議や相続登記など、いくつかの局面で法的な制約が生じることがありますので、正しい知識を持って対応していくことが重要です。
遺産分割協議参加には意思能力が必要
遺産分割協議は法律行為であり、参加する相続人全員が「意思能力」を有していなければなりません。
そして意思能力とは「自分の行為の結果を理解し判断できる能力」のことで、重度の認知症などが原因で意思能力が不十分になると、その相続人が参加した遺産分割協議は法律上無効となってしまうのです。
ほかの相続人だけで協議を行い、認知症の方を除いて遺産分割協議書を作成した場合も同様です。
※「認知症=意思能力の喪失」ではない |
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認知症の診断が常に意思能力の喪失を指すわけではない。軽度の認知症で、遺産分割の内容や結果を理解できる状態にあれば、協議を有効なものとできる可能性がある。 ただ、後日に「当時は意思能力がなかった」と主張され、協議が無効とされるリスクが残る点には注意が必要。 |
成年後見を活用して遺産分割
認知症の方が遺産分割協議に参加するため、成年後見制度の利用をご検討ください。
家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人が選任されれば、その後見人が認知症の方に代わって協議に参加することになります。
申立てに必要なもの
成年後見人の選任には、申立てから2〜4ヶ月程度の期間を要します。
また、制度の利用にあたっては以下の点にご留意ください。
- 申立てができる方
- 本人
- 配偶者
- 四親等以内の親族
- 検察官
- 市区町村長 など
- 申立てに必要な主な書類
※参考(裁判所HP):
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_09_02/index.html- 後見開始申立書
- 医師の診断書
- 本人情報シート
- 戸籍謄本
- 住民票
- 財産目録 など
- 申立て時の費用
- 1~2万円程度(診断書や郵便切手代などを含む)
- 場合によっては鑑定費用(5~10万円ほど)が追加で必要になることもある
なお、診断書は本人の判断能力を客観的に示す重要な資料であり、「後見」「保佐」「補助」のいずれの支援類型が必要かを判断する根拠となります。
誰が後見人になるのか
成年後見人等に選任された方として比較的多いのは、司法書士や弁護士などの専門職です。親族の方が選任されることもありますが、家庭裁判所が本人の利益を最優先に考え、申立人の希望や親族の状況、財産状況などを総合的に考慮して後見人を選びます。
特に相続の場面では親族間での利益が相反するシーンも多いため、専門家を頼るのが推奨されます。
成年後見制度利用時の注意点
成年後見人が選任されれば遺産分割協議を進められるようになりますが、制度の趣旨や費用負担については特に申立て前に確認しておくようにしてください。
法定相続分以上の確保が原則となる
後見人が遺産分割協議に参加する場合、原則として本人の法定相続分以上の財産確保を目指します。
たとえば父親が亡くなり、相続人が母親(認知症)と子2人の場合を考えてみましょう。このときの法定相続分は次のとおりです。
相続人 | 法定相続分 |
|---|---|
母親(配偶者) | 1/2 |
子A | 1/4 |
子B | 1/4 |
後見人は母親の取り分が1/2を下回らないように協議を進めるのが通常で、たとえば「母親は施設に入所しているから取り分はなくてもいい」といった家族の都合で自由に調整できるわけではありません。
継続的な費用負担と財産管理の制限がかかる
専門職が後見人に選任された場合、月額数万円ほどの報酬が発生します。
報酬額は主に本人の財産額の影響を受け、家庭裁判所が決定します。成年後見制度は原則として本人が亡くなるまで続きますので、月額が2万円だとしても10年間続けば単純計算で240万円に達します。
また、成年後見制度の目的は本人の財産保護であり、積極的な資産運用などは制限されます。生前贈与による相続税対策や不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となり、柔軟な財産管理ができなくなる点にも注意が必要です。
銀行の口座管理や不動産登記等への対応
認知症の方がいると、遺産分割のほか、相続に伴う各種移転手続きにも後見人の関与が必要になります。
たとえば預金の名義変更や不動産の所有権移転(相続登記)を進めるシーンです。
金融機関によって対応は異なりますが、署名捺印を求められたり後見人の確認書類の提出を求められたりすることがあります。相続登記においても、署名捺印が必要なシーンでは認知症の方本人ではなく後見人の対応が必要になります。
事前の対策も検討しよう
後見人の選任には時間と費用の負担がかかりますので、前もって取り組める対策についても考えてみると良いです。
たとえば被相続人が「遺言書を作成」しておけば、遺産分割協議は不要となり、後見人を立てる必要もなくなります。公正証書遺言として作成しておけば後日の紛争リスクもより下げられるでしょう。
※ただし、遺言書に記載のない財産や遺留分を侵害する内容であるときは、別途対応が必要となることもある。
あるいは「家族信託を始めておく」という選択肢もあります。家族信託なら成年後見制度と異なり、柔軟に財産管理・運用を続けられるメリットがあります。
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- 所属団体
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- 経歴
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平成10年 早稲田大学 法学部卒業
平成12年 司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務
平成14年 司法書士登録
平成16年 簡裁代理関係業務認定
平成22年 いつき司法書士事務所開業
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