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相続財産に借金があった!相続放棄の手続方法と流れとは?

「相続財産を調べると借金が見つかった!」というケースもあります。

そしてその借金の額が大きい場合、相続を受け入れると相続人は大きなリスクを負うことになります。
そんなときに検討するのが“相続放棄”です。

 

相続放棄をすることで相続人としての立場を捨てることができ、相続によるリスクも回避することができます。
ここではこの相続放棄をするための手続の方法、流れについて説明していきます。

 

相続放棄をするまでの流れ

被相続人が借金をしていたことが発覚してから、相続放棄をするまでの流れを以下に示します。

いきなり手続を行うのではなく、慎重な判断、書類等の準備を進める必要があります。

 

相続財産全体を評価して相続放棄を検討する

まずは「本当に相続放棄をするべきかどうか」について検討します。
借金が含まれているというだけで相続放棄をすべきではなく、その他の相続財産も含めて全体を評価しないとその判断はできません。

 

例えば1億円の借金があっても、2億円の資産があれば全体としてはプラスです。これに対して、100万円の借金に対して50万円の資産しかない場合、借金自体の額はそれほど多くなくても全体としてはマイナスです。

 

このように、プラスとマイナスの財産のバランスに着目しないといけません。
この判断をするためには、各種相続財産の評価額を算定する必要があります。現金や預貯金に関しては悩むこともありませんが、不動産に関しては外観を見て「〇〇万円」などと把握することができません。専門家に評価をしてもらう必要があります。

 

各種財産の評価が済み、相続財産全体が借金によりマイナスになっているときなどには、相続放棄を本格的に考えます。

その検討にあたっては、司法書士や弁護士などの法律の専門家の意見も取り入れると良いでしょう。

 

必要書類の準備

相続放棄の手続に向けて、必要書類の作成や準備を進めます。

 

少なくとも以下の書類は準備しないといけません。

 

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票、もしくは戸籍附票
  • 相続放棄申述人の戸籍謄本

 

その他、申述人別に次の書類も準備します。

申述人

必要書類

配偶者

・被相続人の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

1順位の相続人

(子どもや孫など)

・被相続人の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・申述人が代襲者なら、被代襲者の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

2順位の相続人

(親や祖父母など)

・被相続人の出生~死亡が記載されたすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・第1順位の相続人が亡くなっているときは、当該人物の出生~死亡が記載されたすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・申述人より下の代の直系尊属が亡くなっているときは、当該人物の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

3順位の相続人

(兄弟姉妹や甥・姪)

・被相続人の出生~死亡が記載されたすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・第1順位の相続人が亡くなっているときは、当該人物の出生~死亡が記載されたすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・第2順位の相続人の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・申述人が代襲者なら、被代襲者の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

 

戸籍謄本は本籍地の役所窓口で請求、あるいは郵送での取り寄せも可能です。

多数の書類を収集しないといけませんし、漏れのないようにするためにも、司法書士等への依頼がおすすめです。

 

費用の準備

専門家に依頼する場合は費用が発生します。
依頼する範囲、仕事内容、依頼先となる専門家の種類にもよりますが、おおむね35万円程度は必要です。

 

相続人やその他の人物とのトラブルが起こり、交渉や訴訟を要するような場面では弁護士を利用することになるでしょう。

対応できる範囲は広くなりますが、費用は比較的高めです。
相続手続に関するサポートは司法書士でも対応可能で、弁護士と比べたときの費用は低くなる傾向にあります。

司法書士同士でも具体的な金額は異なりますので、依頼時に具体的な金額を聞いておきましょう。

 

その他手続に必須の費用は次の通りです。

 

  • 収入印紙代

申述人1人あたり800

  • 郵便切手代

数百円程度。詳細は申述先の家庭裁判所で要確認

  • 戸籍や住民票の取得費用

市区町村によるが、1通あたり300円~750

 

家庭裁判所で相続放棄の申述

書類と費用の準備ができれば、家庭裁判所で「相続放棄の申述」の手続を行います。

 

“被相続人が最後に住所を置いていたエリア”を管轄とする家庭裁判所に対して書類を提出して申述を行います。

 

なお、手続はいつでもできるわけではありません。
本人が「相続開始の事実を知ったときから3ヶ月以内」に行わなければなりません。

この期限を過ぎると、基本的には相続放棄ができなくなり、借金についても相続しないといけなくなります。

 

照会書に必要事項を記載して返送

申述後、家庭裁判所から「相続放棄照会書」が送られてきます。送達されるまでの期間はおおむね2週間です。

 

照会書には「相続放棄をする理由」や「いつ相続人になったことを知ったのか」「いつ債務の存在を知ったのか」「相続開始後、相続財産を処分したり債務を弁済したりしたか」といった質問が記載されていますので、これに回答していきます。

 

照会書と同封されている回答書に必要事項を記入して、家庭裁判所に提出しましょう。

 

なお、この時点ではまだ相続放棄は完了していません。

 

相続放棄の許可と申述受理通知書の交付

照会書への回答内容に問題がないなら、相続放棄の申述が受理されます。

そして受理されたことを知らせる「相続放棄申述受理通知書」が申述人に交付されます。

 

この通知書が届いたことが確認できれば、「相続放棄が完了した」と安心できます。

 

通知書は再発行されませんのでコピーを作った上で大事に保管しておきましょう。
また、手数料に150円はかかりますが「相続放棄申述受理証明書」の発行もしておきましょう。

借金の債権者など、各所に対して相続放棄を証明するのに使用します。

 

債権者に相続放棄をしたことを伝える

借金に係る債権者は、誰が相続放棄をしたのかという情報を知りません。

 

そのため相続放棄後に借金の返済を求める請求を受ける可能性があります。放置することに法的な問題はありませんし、債権者に対する通知義務が課されているわけでもありませんが、相続放棄をしたことを通知しておきましょう。

 

相続放棄申述受理通知書、相続放棄申述受理証明書のいずれでもかまいません。

債権者の求めに応じて、どちらかの書類を見せれば相続放棄をしたことの確認が取れます。

 

相続放棄の手続で注意すべきこと

相続放棄の手続を進める上では、①手続の期限、②相続財産の処分、の2点に特に注意が必要です。

 

上述の通り、相続放棄の申述は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内に行わないといけません。

これを過ぎた場合、「相続を受け入れた」とみなされ、その後相続の承認を覆すのは困難です。
期限に間に合わない可能性があるなら、期間の伸長手続を行いましょう。相続財産の調査に時間がかかることもありますし、事情を家庭裁判所に伝えることで、期間を延ばしてもらえることもあります。
期限を過ぎてしまったときでも、事情によっては相続放棄が認めてもらえる余地があります。専門家を頼り、対処してもらいましょう。

 

また、期限とは別に、相続財産を処分してしまうことで単純承認をしたと評価されてしまうこともあります。

相続放棄の可能性がある段階では、相続財産を処分するような行為は一切避けなくてはなりません。

 

「借金の一部の弁済」もしてはいけません。
債権者から「一部でもいいから返済して」と求められても、これに対応しないようにし、対応に困ったときは専門家に相談しましょう。

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  • 経歴

    平成10年  早稲田大学 法学部卒業

    平成12年  司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務

    平成14年  司法書士登録

    平成16年  簡裁代理関係業務認定

    平成22年  いつき司法書士事務所開業

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